スロープで安全に

2020年11月8日

「介護リフォーム」「住宅改修」に携わる私たちは、時々ジレンマに襲われることがあります。

高齢者の方や要介護者の方のご自宅を、生活しやすいようにバリアフリーにするのが私たちの仕事です。

とは言え、改修することにより、その方々やご家族が大切にしてきた家の外観や雰囲気が台無しになることがあるからです。

今回は、ご自宅の庭をコンクリートスロープに改修させていただいたW様邸のお話しをさせていただきます。

 

W様は、今年の7月に誤嚥性肺炎で入院されました。

今後、再び誤嚥の危険があるということで、入院中に胃ろう増設手術を行うことになりました。

「胃ろう」とは、口から食事が摂れない方や食べてもむせ込んで肺炎などを起こしやすい方に、直接胃に栄養を入れる栄養投与の方法です。

W様も、おなかに小さな口を造り、その造られたおなかの口にチューブのような器具を取り付けて栄養を投与することになりました。

 

約2ヶ月の入院を経て、9月末に退院することになったW様。

在宅復帰となったものの、生活は入院前とはがらりと変わってしまったのです。

移動はすべて車いす、ほぼ寝たきりですべてのことに介助が必要となりました。

それでも、リハビリや入浴のために週6日(月曜~土曜)デイサービスを利用することになったW様。

ご家族から、「車いすで安全に外出ができるように自宅の庭を改修してほしい」というご相談がありました。

現地確認のためW様のご自宅に伺ってみると、玄関から敷地の外に続くアプローチに飛び石と段差があり、車いすで行き来するにはとても困難な状況でした。

奥さまからお話しを聞いたところ、家を建てるときにW様は雰囲気のある庭を造ることに大変こだわり、元気な時はすごく庭を大切にされていたそうです。

そのこともあり、最初は庭の飛び石を残したまま表面だけコンクリートにしてフラットにしてほしいと言われました。

一見簡単そうな話しですが、飛び石ひとつひとつの表面に凹凸があり、またコンクリートを薄く塗ってしまうと表面が割れてしまうので、石を残したまま車いすで行き来できるようフラットにするのは、かなり難しいことをお伝えしました。

すると、奥さまはすぐご理解してくださり、飛び石を撤去して全面コンクリートにしてもよいと言ってくださり、工事をさせていただくことになりました。

(この時、私自身もW様が大切にしてこられた庭を改修することに、多少のためらいはありました)

 

工事の工程はそんなに難しくなく、日数もかからない工事です。

しかし、敷き詰めたコンクリートが乾いてその上を歩けるようになるのに2~3日は必要です。

日曜日以外毎日デイサービスに通うW様にとって、玄関から行き来できなくなるのは厳しい状況でした。

しかし、担当ケアマネジャーさまのご理解、デイサービスの職員さんや福祉用具貸与事業所の方のご支援・ご協力もあり、一時的に掃き出しから出入りできるようにしてくださいました。

スロープが完成し、安全に車いすで行き来ができるようになった時、ご家族をはじめW様に携わる介護サービスの職員みなさんが笑顔で「良くなったね」と言ってくださったとき、少し胸のモヤモヤが解消された気分になりました。

 

工事が終わって1週間後、奥さまとお嫁さんにお話しを伺うと、W様が大切にしてこられたお庭を、これからは奥さまが大切にしていかれるとのことでした。

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